北摂 一戸建ての小さな願い

毎日のように速報として送られてくる不動産情報だから毎日速報、略して「毎速」というわけだ。 そしてこのチラシが、指定流通機構への登録図面としても使われている。
さて、中古マンションを買いたいという人から依頼を受けた業者はまず、自分の手元にストックされている情報と指定流通機構のホストコンピュータから取り寄せた情報の中から、これは気に入ってもらえるかもしれない、というものをピックアップする。 集めた情報のチラシをそのまま依頼者に渡すのか、というとそうではない。

まず業者がやることは、チラシの一番下に情報提供者の業者名が書き込まれた帯の部分を一枚一枚丁寧に折り込むのだ。 その「帯折りチラシ」をコピl機にセットしてから、帯分だけあいたスペースに、自分の会社の名前が印刷された別の帯をセットする。
どのチラシも帯の太さが同じ、というのがここで生きてくるわけだ。 さて、この状態でコピーすれば、帯部分だけ自社の名前にスリ替わった、けれども物件はすべて先物のチラシ(これを「先物チラシ」という)ができあがる。
この「先物チラシ」を、物件を探してほしい、という依頼者に渡せば、「この物件についての窓口は私です」ということになるのだ。 もし、業者から直接収集したチラシが手元にあれば、じっくりとその紙を観察してみよう。
チラシ本体と帯状部分との境界に、突き合わせてコピーしたような微妙なズレや重なりがあることに気づくはずだ。 もしそのような様子などまったく読み取れないチラシであれば、いちおうそれは、他の業者から横流しされた情報に手を加えた「先物チラシ」ではないと考えてよい。
おそらく、その会社が売り主から直接売却を依頼されて、チラシ制作会社に自ら発注した、つまり直物のチラシ(これを「直物チラシ」という)と推測できるわけだ。 業者の報酬争奪戦に巻き込まれるな。
先物チラシと直物チラシの区別さえついていない人がほとんどなのに、その中にまぎれ込んでいる、行く末恐ろしい「アンコチラシ」を見分けろというのは、あまりにも酷な話かもしれない。 売り主から依頼を受けた業者がその物件の情報を業者間に流すと、他の業者はその情報をキャッチして先物チラシの制作に汗をかくわけだ。
ところがこの業者手づくりの先物チラシが買い主に直に手渡されるかというと、そうとはかぎらない。 なんと、このチラシがさらにまた別の業者に出まわるのである。

これを受け取った業者が、また一生懸命、帯部分を差し替えての自家製チラシづくりに励むのだ。 まさに「チラシがチラシを呼ぶ」とはこのことで、こうなると最終的に買い主が受け取ったチラシは、何人もの業者の手アカにまみれている。
つまり、買い主と売り主との間には、何人もの業者が介在することになるわけだ。 このように、買い主である自分に情報提供した業者が売り主直の元付け業者からの情報ではなく、業者間に介在することを飯の種にしているアンコ業者から情報を取得している場合、そのチラシを「アンコチラシ」というのである。
「アンコチラシ」はいうなれば先物チラシの範曙に含まれるのであるが、買い主としてはこの手の情報で物件購入を試みるのは極力回避すべきだろう。 なぜならば、アンコ業者がからむ不動産取引では、契約に介在する各業者間で、手数料報酬の分配方法について明確でない場合が往々にしてあるからだ。
報酬の争奪戦に、買い主が巻き込まれないともかぎらない。 買い主はあくまでも自分が直接、正式に媒介を依頼した業者だけにしか報酬を支払う義務はないわけだ。
ところがいざとなると業者の迫力に気圧されて二重払いしてしまったというような例は少なくない。 売買に関与した別々の業者からそれぞれ「売買価格×三パーセント+六万円」の報酬を強引に請求され、あたかもそれが合法的な行為であるかのような毅然とした態度に気合い負けしてしまい、ふと気がついたらダブルで払っていた。
この手の悲惨な話は珍しくない。 事実、元付ザと客付ザというように業者が二者だけできれいに報酬が分かれる取引のほうが少ない、という業者の意見もある。
元付けは売り主から、客付けは買い主からというのが、業界でいう「分かれ」という報酬分配のルールである。 ところが現実には、元付けと客付けの間にアンコが入る場合のほうが多いというわけだ。
そうなるとそのアンコに依頼した業者がアンコの報酬についても面倒を見るというのが、業界でいうところの「分かれの原則」というルールである。 こう聞いて、なんて不動産業者はカネに対して紳士的かつ合理的なんだろう、と思ったら大ヤケドをする。
アンコ業者が入っているような取引は、そのアンコ業者が一業者だけというようなことはほとんどない。 つまり一つの取引に、アンコ一号、アンコ二号、アンコ三号がゾロゾロ介在してくる。
そうなるともう、かぎられた報酬をめぐって業者間では仁義あってなきがごとしの争いが起こることになる。 「この間なんて、いざ契約締結ってときに、集まった業者の数を数えたら驚いたことに総勢八業者もいたんですよ。
それにローン会社の担当だの司法書士の先生だとかが加わったもんですから大会議でしたよ。 買い主さんも売り主さんもそりやもう居並ぶ業者の迫力に脅えちゃって、契約の内容など確認する余裕なんてまったくありませんでしたね。

後でトラブルでも起きなければいいんですが」(大手信託銀行課長M氏)こうなると「分かれの原則」というようなルールがあっても役には立たない。 売り主、買い主を前に、少しでも多くの分け前にありつこうとする業者同士で大モメにモメてしまったということになるわけだ。
なんと中にはこのような醜態を演じることがないように、業者間の報酬分け前の調整業務を積極的に買って出て、それ専門に食っている業者もいるというから驚きである。 これがアタリ業者からアタリ情報をとる方法だ。
不動産を買おうという人にしてみれば、よい物件の情報は手に入れたいけれども、持ち込んできた業者が頼りないとそれだけで魅力が半減してしまう。 おまけにその情報が「アンコチラシ」だった日には目もあてられない。
もちろんそういう情報を平気で持ち込むようなハズレ業者に、価格の交渉ごとなどまかせられるはずがない。 できれば気に入ったその物件を別の優秀なアタリ業者を通じて買う方法はないものだろうか、と考えても不思議ではない。
かといって、業者をハズしたために、後で「抜きやがったな」という苦情が業者から入るようなことはしたくない。 そこで登場するのが、マンション買い換え歴実に五回、中古マンションの取得法に関しては、そんじょそこらの不動産屋など目ではないというTさんである。
彼の物件情報取得法は、とてもシンプルなうえに、案内なくして手数料請求権は基本的に発生しないという業者聞の商慣習の原則を実にうまく利用した手法なのだ。 「大事なことは、いかに不動産屋に会わないで情報を取るか、ということでしょう」アタリ情報とアタリ業者とのベストな組み合わせをつくるのが重要、というのがTさんの信条である。
そのためには、よい情報を手に入れたときにその情報提供者がハズレであることも想定して、必ずしもその業者を通さなくても物件にはアプローチできるような仕組みをあらかじめつくっておくことが重要になるというのだ。

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